歩き方
「歩く」とひと言でいっても、道にはいろいろあります。アスファルトの道や手つかずの道、上り坂、下り坂など。これらにはそれぞれ、最も適した歩き方があります。それをマスターしているか否かが、歩くことを楽しめるかどうかの分かれ道。正しい方法をマスターすれば、歩くだけで効果的な全身運動ができます。筋肉を鍛え、心臓を強化し、さらに毛細血管まで新鮮な血液を送り届け、脳も活性化。いいことずくめの「歩く」、さっそく挑戦してみましょう。

アスファルトの道は、正しい歩き方をしていないと膝など関節を痛めることもあります。アスファルトの平地の歩き方をマスターするための基本は、まず正しい姿勢を保つこと。背筋を伸ばして、耳、肩、足のくるぶしが同一線上に並ぶように立ち、膝を少しだけゆるめます。さらに、ヒモで頭頂からまっすぐ上に持ち上げられているイメージを描き、あごを引きます。目線は15mくらい先をまっすぐ見ます。これが基本姿勢。全身が映る鏡で前後左右からチェックし、傾いている部分は意識して直すようにします。

さて次は歩行。頭頂から背筋、脚部へと、身体の中心を通る1本の軸をイメージし、これは常に地面と直角にします。そして背筋をまっすぐにしたまま肩の力を抜き、腹部に力を入れて腹筋を意識しながら、左右の足を交互に前に出します。膝はまっすぐ伸ばし、地面を蹴るイメージで足を前に出し、つま先が上に向いた形で、かかとから着地します。手のひらは軽く握り、手首はまっすぐ伸ばしたまま肘を軽く曲げて、左右前後に振り出します。歩幅は自分の身長×1/2より少し広めに。背筋を伸ばしている分、いつもより少し高い視線で、手と足、そして全身がリズミカルに動くように、さっそうと歩きましょう。

上り道は、平地に比べて心拍数が上がるのが早くなります。理想的な全身運動である「歩く」ことも、限界を超える心拍数で続けると、心臓に負担をかけ、健康には逆効果になってしまいます。この点をじゅうぶん配慮して、心拍数は「(220−自分の年齢)×0.7」が理想。そのくらいを保ちながら、上り道を歩くといいでしょう。時々脈拍を計り、スピードを調節しましょう。

▼年齢別の理想的な心拍数例
  • 30歳 (220-30)×0.7=133
  • 40歳 (220-40)×0.7=126
  • 50歳 (220-50)×0.7=119
  • 60歳 (220-60)×0.7=112

上り道では、平地の歩き方と基本姿勢が異なります。上り道では、傾斜に合わせて身体を傾けます。無理に前に倒すのではなく、道の傾斜に沿った自然な前傾姿勢を心がけます。その分、重心は少し前になります。歩くときは、足の底全体を地面につけます。かかとだけ、あるいはつま先だけでは、疲れやすくなるので要注意。リズミカルに一定のペースを保つのは平地の歩き方と同じですが、ペースは少し控え気味に。心拍数が高くなったら、ペースダウンします。歩幅は平地より少し狭く設定し、傾斜がきついほど、狭くします。また、腿をあまり高く上げずに歩くことが、上り道で疲れないコツです。

上り道のような息切れしたりすることがないため、下り道はかんたんだと思う人もいるでしょう。でも、実は下り道のほうが疲れやすく、膝や脚、腰を痛めることも多いのです。下り道を軽く考えて小走りに下りたりしないよう、じゅうぶん注意しましょう。下り道を歩くときは、背筋をまっすぐにし、傾斜に沿って身体の重心を後に置いて傾かせ、常に地面と身体が直角になるようにします。この時、絶対に腰を突き出したような姿勢にならないように注意。膝は軽く曲げ、足底全体で地面を踏みます。下りでは、荷重のほとんどが足にかかってくるので、全身のバランスを整えて、リズミカルに歩きましょう。
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