Top

オトシブミの国

チョッキリの国


ケシツブチョッキリ族・ハマキチョッキリ族
チョッキリ族(2)
イクビチョッキリ族


ホソチョッキリ族
チャイロ
ルリホソ
ホソ
キアシホソ
クロホソ
ザウターホソ

チョッキリ族
クチブト
ルリチビ
タチバナチビ
セアカ
カゼ
ヤナギルリ
カシルリ

ホソチョッキリ族Eugnamptini


 短い吻,大きな複眼,扁平な体型,かなり長い被毛を持っていることがこの族の特徴で,イクビチョッキリ族とよく似ている.このような形態から葉に産卵する習性を持つと考えられるが,野外での生態はすべての種で不明である.
 日本には3属6種が分布する.

チャイロチョッキリAderorhinus crioceroides (Roelofs,1874)

体長 5.5-6.8(mm)
色彩 朱色(標本は茶色),脛節,ふ節,触角先端部は黒色
特徴 大型のチョッキリで色彩がはっきりしているため遠くからもよく目立つ.オスの頭部は細く,複眼はメスよりやや大きく横に張り出す.体は赤褐色の長い直立毛とやや短めの斜生毛を密布する.脛節とふ節は黒褐色の長い毛で一面に覆われる.
近似種 なし
ホスト クリ
生態 年2回初夏から盛夏にかけて見られる.成虫越冬?潜葉性
飼育すると葉の表から半月状の貫通孔をあけ,その弦の部分から葉肉にポケット状の穴を作り産卵する.産卵痕はかなり大きく目立つので,野外でも容易に探しうるが今のところ全く見つかっていない.しばしば,オトシブミ,ゴマダラオトシブミとともに見られるので,これらの揺籃を利用している可能性もある.あるいは落ち葉を利用しているのかもしれない.
分布 普通種(低山地~山地)
北海道,本州,四国,九州,ビルマ        県別分布表




ルリホソチョッキリNeoeugnamptus (Neoeugnamputus) amurensis (Faust,1882)

体長 3.5-5.0(mm)
色彩 顕著な光沢のある瑠璃色
特徴 複眼は雌雄ともに大きく,特にオスは頭部の3分の1近くを複眼が占めている.体は暗褐色の長い直立毛とやや短めの斜生毛を密布する.脛節とふ節の被毛は前種ほど密ではない.第9点刻列と第10点刻列は上翅端まで合流しない.前脛節背稜に針状突起列はない.
近似種 なし
ホスト ヤシャブシ,ヤマハンノキ,ダケカンバ,クリ,コナラ
生態 年2回夏,初秋出現,成虫越冬?潜葉性
飼育条件下では葉の表から半月型に穴をあけ,弦の部分からポケット状に葉肉をくりぬき産卵する.野外ではどのように産卵するのか分からない.しばしば,オトシブミ,ゴマダラオトシブミとともに見られるので,これらの揺籃を利用している可能性もある.
分布 普通種(低山地~山地)
北海道,本州,四国,九州,ロシア        県別分布表




ホソチョッキリEugnamptobius (Eugnamptobius) aurifrons Roelofs,1874

体長 3.5-4.6(mm)
色彩 黄褐色,頭部,前胸先端部はやや緑色光沢を帯びた黒色.腹面は黒褐色.
特徴 上翅の被毛は黄色で,間室に長い直立毛,点刻列には直立毛よりは少し短い斜生毛を密布する.第9点刻列と第10点刻列は第2または第3腹節上で合流する.前脛節背稜に微小突起列がある.
近似種 キアシホソチョッキリ:  前脛節背稜の突起列の有無で判別する.
ホスト ツバキ,コナラ,タイミンタチバナ
生態 年1回初夏出現?,成虫越冬?潜葉性
飼育条件下では葉の表から穴をあけポケット状に葉肉をくりぬいて産卵した.老熟幼虫は葉から脱出して土中で蛹化・羽化し,秋に土中から出てきた.成虫で越冬すると思われる.野外での状況は全く不明.
分布 暖地性?分布は局所的.
本州,四国,九州,沖縄,八重山        県別分布表




キアシホソチョッキリEugnamptobius (Eugnamptobius) flavipes Sharp,1889

体長 3.0-4.0(mm)
色彩 光沢のある暗茶褐色,上翅は黄褐色ときに暗茶褐色または黒色.触角と肢は黄色.
特徴 かなり細い体型で,触角,肢は長い.上翅の被毛は黄色で,間室に長い直立毛,点刻列には直立毛よりは少し短い斜生毛を密布する.第9点刻列と第10点刻列は第2または第3腹節上で合流する.前脛節背稜に微小突起列はない.東海地方ではオスのほうがメスより明色であることが多い.
近似種 クロホソチョッキリ:  上翅の被毛の状態,前脛節背稜の突起列の有無で判別する.
ホソチョッキリ:  前脛節背稜の突起列の有無で判別する.
ホスト タンナサワフタギ(愛知,岐阜,長野),アセビ(神奈川),シキミ(三重),ヒメシャラ(奈良)
生態 年2回夏,初秋,成虫越冬?潜葉性
地域によりホストが全く異なる.飼育すると葉の裏からポケット状に葉肉に穴をあけ産卵する.野外では産卵してある葉が確認できていない.食痕は一面に着いているにも関わらず産卵痕はない.落ち葉を利用している可能性もある.
分布 普通種(山地)
北海道,本州,四国,九州        県別分布表




クロホソチョッキリEugnamptobius (Eugnamptobiusmorimotoi Nakane,1963

体長 3.5-4.5(mm)
色彩 暗茶褐色または黒色,肢は黄色
特徴 前種とよく似ておりときに本種と誤同定される.上翅の被毛は斜生しており周辺部のみ直立毛がある. 前種に比べて被毛はやや短く,点刻列もわずかに弱くなめらかに見える.第9点刻列と第10点刻列は第3腹節上で合流する.前脛節背稜先半分に微小突起列がある.
近似種 キアシホソチョッキリ: 上翅の被毛の状態,前脛節背稜の突起列の有無で判別する.前種よりやや大きい.
ホスト ヤシャブシ
生態 不明
分布 本州        県別分布表

  


ザウターホソチョッキリEugnamptobius (Cyaneugnamptussauteri Voss,1921

体長 3.4-4.2(mm)
色彩 顕著な光沢のある瑠璃色
特徴 上翅は間室に長い直立毛,点刻列には直立毛よりは少し短い斜生毛を密布する.第9点刻列と第10点刻列は第1または第2腹節上で合流する.
近似種 なし
ホスト タイミンタチバナ
生態 不明
分布 奄美,八重山,台湾




チョッキリ族(1)Rhynchitini


 特徴のはっきりしたグループを次々と族にまとめたあとの残りをすべて一つの族に押し込めたといった感がある. 強いていうならば比較的厚みのある丸みを帯びた体型と長い吻そして幾分長めの被毛を持つといったところだが,これに当てはまらないものもかなり含まれる.

 分類はいまだ確定的とは言いがたい状況にある.Alonzo-Zarazaga et al.,2017 の旧北区ゾウムシ上科カタログでは非常に細分化されているが, その妥当性についてはかなり疑問が残る.ここでは一応カタログに従っておくが今後大幅に変更される可能性は高い.

 日本産は 11 属 25+α 種に分類される.

クチブトチョッキリLasiorhynchites (Nelasiorhynchitesbrevirostris (Roelofs,1874)

体長 3.5-4.8(mm)
色彩 金属光沢のある青藍色
特徴 体型は幅広扁平,吻は太く短く,頭部は方形で後頭部がわずかにくびれ,イクビチョッキリ族に似る.やや長い暗褐色直立毛に覆われる点がイクビチョッキリ族と異なる.
近似種 なし
ホスト カシ,コナラ,ミズナラ,クリ
生態 年1回春出現,托卵?
アシナガオトシブミ,ゴマダラオトシブミが揺籃を作っている最中しきりにつきまとうところが観察されているが産卵は確認されていない.
分布 普遍的に分布するが個体数は多くない.
本州,四国,九州        県別分布表




ルリチビチョッキリTemnocerus japonicus (Morimoto,1958)

体長 2.2-2.7(mm)
色彩 青緑色の弱い光沢を持った黒色
特徴 体型はかなり細めで,吻は直線的でやや長く,頭部は方形をしており,オスでは後頭部はやや細まり,メスでは後方にやや広がる.点刻は強く,第9点刻列は翅端近くまでのびる.短い暗褐色細毛が斜生し,まばらに直立毛が生える.
近似種 カシルリチョッキリ,ヤナギルリチョッキリ:  同時に捕れることがありうる.(もっともめったに本種が捕れることはないと思うが.)第9点刻列の状態の違いで区別できるが,体型がかなり細めであること,頭部が方形で,吻がより短いことから判別する.
ホスト ヤナギ,シラカンバ
生態 シラカンバのシュートに産卵し切断する.
分布 中部山岳では1500m以上に分布するが少ない.
北海道,本州        県別分布表
備考 原色日本甲虫図鑑 Ⅳ ではPselaphorhynchitesに分類されていたが,属名が変更になった.




タチバナチビチョッキリTemnocerus morimotoi (Sawada,1997)

体長 3.5-4.0(mm)
色彩 光沢のある緑青色を帯びた黒色
特徴 ルリチビチョッキリに似ている.吻は直線的でやや長く,触角は吻の基部より1/3のところに付く.頭部は方形をしており,オスの後頭部は両側ほぼ平行,前胸前縁直前でわずかにくびれる.メスの後頭部は後方にやや広がる.前胸背板はしわ状に点刻される.やや明るい被毛が斜生しわずかに直立毛が混ざる.
近似種 ルリチビチョッキリ: 今のところ分布が重ならないので混同することはなさそうである.本種の方が体長は一回り大きい.
ホスト 不明
生態 不明
分布 本州・四国・九州(立花山)
備考 記載論文では Pselaphorhynchitesに分類されていたが,属名が変更になった.




セアカチョッキリJaponorhynchites sanguinipennis (Roelofs,1874)

体長 4.0-5.0(mm)
色彩 黒色,上翅は赤褐色.
特徴 体型はかなり丸く,クチナガチョッキリ,グミチョッキリに似る.吻は細く長い.雌雄の差はほとんどなく外見で判断するのは困難である.(吻の曲がり具合,複眼の付き方がわずかに違う.)背腹とも灰白色の短毛に覆われ光沢がない.
近似種 なし
ホスト カマツカ,アセビ(まだ産卵は確かめられていない.)
生態 年1回初夏出現,実に産卵
山地では8月から9月にかけて(低地では6月頃から見られる)まだ熟していない青い実に産卵する.穿孔時間40分ほどで吻の根元まで達する孔をあけ,反転して産卵し吻を用いて卵を種子の中へ押し込む.産卵した実は切り落とさずそのまま木に着いており,やがて赤熟する.幼虫は種子の内部を食べ,10月ころには実から脱出し土中で蛹化・羽化する.ナナカマドの実を後食しているのを見ているが産卵するかどうかは分からない.
分布 産地,個体数とも多くはない.
本州,四国,九州        県別分布表
備考 原色日本甲虫図鑑 Ⅳ ではInvolvulusに分類されていたが,1993年沢田により属が変更され,その後再び属名が変更になった.




カゼチョッキリJaponorhynchites caeligenus (Sawada,1993)

体長 3.1-3.6(mm)
色彩 赤褐色,上翅会合部は暗色.
特徴 吻は細長く緩く湾曲する.オスの吻は頭部と前胸を合わせた程の長さで,メスではさらに長い.オスの複眼はかなり大きく前方に張り出す.淡色の斜生毛に密に覆われまばらに直立毛が混ざる.
近似種 なし
ホスト 不明
生態 不明
分布 本州,九州,八重山        県別分布表




ヤナギルリチョッキリNeocoenorrhinus (Neocoenorhinidius) interruptus (Voss,1920)

体長 2.2-2.8(mm)
色彩 光沢のある青藍色,青緑色
特徴 形態的には次種と酷似する.吻はやや長く,頭部は幅広い.オスの複眼はやや横に張り出し,前胸は丸い.メスの吻はオスに比べてかなり長く,前胸の膨らみは少ない.上翅の点刻列は強く,間室は弱く点刻される.第9点刻列と第10点刻列は第1腹節と第2腹節の上部付近で合流する.灰色のやや寝た細毛に覆われる.
近似種 カシルリチョッキリ: 上翅の被毛の状態,間室の点刻の強さから判断する.北関東,東北,信越以外の多くの地方で分布は重ならないので混同するおそれは少ない.一見カシルリチョッキリに比べて明るく光沢が強い感じがする.
ホスト ヤナギ,リンゴ,オニシモツケ,カキ
生態 年1回春出現,新梢切断
分布 北方系で次種と分布を分けている.
北海道,本州        県別分布表




カシルリチョッキリNeocoenorrhinus (Neocoenorhinidius) assimilis (Roelofs,1874)

体長 2.2-2.8(mm)
色彩 光沢のある青藍色
特徴 吻はやや長く,頭部は幅広い.オスの複眼はやや横に張り出し,前胸は丸い.メスの吻はオスに比べてかなり長く,前胸の膨らみは少ない.上翅の点刻列,間室の点刻は強い.第9点刻列と第10点刻列は第1腹節と第2腹節の上部付近で合流する.暗褐色の短く曲がった斜生毛に覆われ,まばらにやや長い直立毛が混ざる.
近似種 ヤナギルリチョッキリ:  上翅の被毛の状態,間室の点刻の強さから判断する.北関東,東北,信越以外の多くの地方で分布は重ならないので混同するおそれは少ない.
ホスト カシ,ウバメガシ,コナラ,アベマキ,ミズナラ,クリ,ヤナギ,カキ,モモ,サクラ,マンサク,
ネジキ,ヤシャブシ,ヤマハンノキ,ナツグミ
生態 年1回春出現,新梢切断
低地では4月中旬頃より現れ,新芽,新梢に複数個の孔をあけ産卵し,産卵部直下で切り落とす.
分布 普通種 北陸地方では一部前種と分布が重なる.中部山岳地帯でも本種が見られる.
本州,四国,九州        県別分布表