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旅立ち そして別れ

 翌年のお正月のことだった
賢介と桃子はこたつに入ってミカンを食べながらテレビを見ていた。
突然、「賢ちゃん、もうそろそろ僕も自分の星に帰る日が近づいてきました。」久しぶりにこんなメールが飛び込んできた。
賢介たちのそばにはポチがきぜんとして座っていた、いつものだらだらとした犬ではなく、何か特別な犬のようにも見えた。
今度は、メールではなく人間の言葉を話しはじめたのである。これには今までの事情を全く知らなかった桃子はびっくりしてしまった。
「賢ちゃん、桃ちゃん そろそろ僕はもう自分の星に帰らなければならない時が来ました。今まで本当にありがとう。
地球は青く美しくきれいな星で、人間は優しくて、知能も高くすばらしい生物だ、こんなすばらしい人間たちがなぜ人間同士でお互いを殺し合う戦争なんかをしているだろうね。もっと平和を大切にして地球上の生物全てが仲良く共存してほしい。
賢ちゃんたち、この美しい緑の地球を守ってね。」そうしゃべったのである。
 
 雪の降る2月のある寒い朝、ポチは地球での役目を終えたのだった。
最後の言葉は「ありがとう、賢ちゃん桃ちゃん幸せになってね。さようなら」という言葉だった
そういい残して遙か220光年のかなたへと帰っていった。
桃子と賢介の二人はポチの亡骸を抱きしめ、「ポッちゃんありがとう、そして、
さようなら」と叫びながら、おいおいといつまでも泣き続け、涙がとどまらなかった。