きりきり きりきり 歪んだ螺旋は回りつづける。 耳を塞いで 目を閉じて やり過ごすのが利口だよ? 想いの螺旋8 僕はそんな彼女の言葉にすら何も感じなかった。 …そうかもしれないな。 今までの経験と記憶を反芻して…納得したほどだった。 「やはり… 何も感じないのね。 何も言ってはくれないのね…」 こんな時に言べき言葉なんて 僕は知らない。 わからない。 それだけだった。 「けれども…これであなたは私を決して忘れない」 彼女の声に僕ははっとした。 僕等が話しているのは離れの3階にある僕の研究室。 そして彼女は露台の格子に座って…微笑んでいた。 「やめ…」 「やめるんだ、西利!!」 僕の声にかぶさって響いた声は 兄のものだった。 おそらく先ほどの義姉の絶叫を聞いてやってきたのだろう。 「西利、どうか落ち着いてくれ。 私はお前を失いたくないのだ」 誠実な兄は必死で彼女を宥めようとしている。 僕は半ば安心していた。 彼女がまさか、兄の前でもそんな無茶をするとは思わなかったので。 兄の前であの人はいつも貞淑な妻を演じていた。 「私はあなたなど愛してはいないの…」 躊躇いも無く彼女は言い切った。 茫然とした兄を尻目に彼女は露台の格子に足を架ける。 「愛しているわ、普賢」 そのまま彼女は…… 飛び降りた。 僕が苦手なあの微笑を浮かべて、彼女は落ちていった。 僕は ただ それを見ていた。 僕は彼女の行動を予想すらしていなかった。 窓の方へ近づこうとした時。 誰かが僕の手を強く引いた。 兄、だった。 その手が蛇のように僕の喉に絡みついて、 強く 強く しめあげた。 や・め・ろ!!! 響いた声は 家人のものでも 両親のものでもなく 太公望 その人のものだった。 だから言ったのに? 眼を閉じて 耳を塞いでおいでと… next ************** やっと過去編が終ってくれましたι ふうーなんとか最後に望ちゃん登場! しっかしこの普賢の義姉さん…普賢ちゃんファンに 嫌われるタイプだろうなあ(^^; 次から望ちゃんが活躍してくれるといいなあ←もはや希望的(爆) 峪栞