さらさら
さらさら
崩れて
流れて
落ちていくもの
この手から
零れ落ちたものは何?
想いの螺旋4
過去との邂逅。
物心ついたときから
僕は何も感じない子供だった。
自惚れる訳じゃないけど
頭は飛び抜けて良かったから
すぐに気が付いた。
僕は他の人と違って何も感じないということに。
別にそのことを悲しいと思ったことはなかった。
ただ自分に感情を向けられることは苦手で。
好意。
期待。
尊敬。
嫉妬。
そんなものは僕にとって煩わしいものに過ぎなかった。
理解できないし、理解したいとも思わないもの。
僕は人より物が好きだった。
そこにあるのは真理のみで人間のように煩わしい感情というものを
向けてくることがなかったから。
だから
僕が物理学にのめりこんだのは自然な成り行きだったと思う。
ただひたすらに研究にのめりこんで、家族ですら接するのが
苦痛になったころ。
僕は両親に頼んで広大な屋敷の一角に離れを造らせてそこに
一人で住み始めた。
このころからだったと思う。
僕が意識的に笑顔を使うようになったのは。
無表情でいるよりも笑顔でいれば他人が自分により穏やかな
感情を向けてくることを学んだから。
僕は自分だけが存在する心地良い空間の中で
自分の知識欲を満たすためだけに存在していた。
そんな僕の空間に空気を乱すことなく入り込めたのは
兄だけだった。
兄は穏やかな気性の持ち主でいつも暖かな空気を身に纏った人だった。
この人が自分に向けてくる愛情は苦手だったけれど。
両親のように押し付けがましいものでは決してなかったので
僕はこの人だけを僕の空間に入れることを許容した。
それでも彼にすら僕は特別な感情を抱くことは無く。
ただ僕の空間に存在することを物のように容認していただけだった。
それでも僕と僕の空間の平穏は保たれていた。
少なくとも僕に姉ができる前までは。
兄が花嫁を連れてきたその時から。
僕の時間と安息は狂い始めた。
まるで壊れた砂時計のように。
さらさら
さらさら
崩れて
流れて
落ちていくもの
この手から零れ落ちたものは何?
さらさらと
零れ落ちるは
狂った
狂った
砂時計。
next
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過去編の始まり−。
なかなか進みませんねこれ。
とにかく普賢ちゃんの独白から
過去編は語られます<基本的に
しかしー普賢ちゃんひど…。
仮にもお兄さんなのにねー(^−^;)
これからろくでも無い方向へ転んでいく予定
ですがよろしかったらお付き合いを…←をいをい
峪栞