ピカピカと輝くゾウムシ


ケブカトゲアシヒゲボソゾウムシ Phyllobius armatus Roelofs


ケブカトゲアシヒゲボソゾウムシ


日本産ゾウムシの仲間はその多くが地味な色彩をしています. (熱帯のゾウムシの中には色鮮やかな種もあります.)ほとんどが黒か褐色でおそらく保護色となっているのでしょう. 緑色も葉の色と同じで保護色となるはずですからたくさんいても良いはずですがあまり多くはありません. それは生葉専門に食べるゾウムシが多くないことを示しています.ゾウムシの祖先は腐朽材をホストに選びました. 腐朽材では昆虫が消化できないセルロースが菌類により分解され栄養価が高くなっていること,生の葉や材では 防護物質を克服しなければならないことから選択されたのでしょう.材に孔をあけ少数卵を確実に育てる戦略を採った ことから,孔をあけるための口吻が長くなったと考えられています.また,材の内部をトンネルを掘って食べ進むのですから幼虫に足はいりません. やがて広葉樹が広く地球を覆うようになるとこれを利用するゾウムシが現れます.葉をかじるのに都合が良いよう再び口吻が短くなってきました. 産卵も孔をあけて卵を産み込む方式から多数ばらまき式に変化してきます.しかし生葉食に完全には対応できておらず,幼虫に足がないため 葉の表面から囓ることができません.(タコゾウムシ,タマゾウムシの仲間はちょっとした工夫をして葉の表面から葉を食べます. 別の部屋で紹介します.)ヒゲボソゾウムシ,クチブトゾウムシの仲間は木の上から卵をばらまき,幼虫は地中から木の根を食べます.
本種はリンゴコフキゾウムシと呼ばれていましたが,ケブカトゲアシヒゲボソゾウムシと改名されました. ヒゲボソゾウムシ族 Phyllobiini の中では最も大型で色彩も鮮やかです.少し古くなると上翅の緑色の鱗毛が抜け落ち真っ黒になってしまいます. ちょっとした山地で5月頃から7月まで様々な広葉樹で最も普通に見られ,個体数も多くビーティングをしていて本種が落ちてこないことはほとんどないくらいです. ヒゲボソゾウムシの仲間は非常によく似た種が多く,野外でちょっと見た目では種までは分かりません.特にリンゴヒゲナガゾウムシ種群は 紀伊半島で著しく分化しており,狭い地域ごとに種が違っています.


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