生葉を囓る工夫・クロタマゾウムシ


クロタマゾウムシ Cionus helleri Reitter


クロタマゾウムシ


ゾウムシ類の幼虫には歩脚がなく,ほとんどの種は葉にしがみついて 外から囓ることができません.もちろんクロタマゾウムシの幼虫にも歩脚はありません. 右上の写真は幼虫を横から写したものですが,チョウやガのイモムシのように脚らしきもの(腹脚といいます)が見えています. 腹脚の先端は吸盤になっていて葉などにに吸い付くことができます.さらに体はべたべたの粘液で覆われていて葉にぺったりと くっついています.普段はじっとしているので薄黄色の液滴かなにかがくっついているように見えます. とても動き回るようには見えないのですが,つついてみると思ったより速く例の腹脚を使って移動します. 頭は下向きに着いていて上から見ても見えません.イモムシのように葉をバリバリ食べるのではなく, 葉にへばりついたまま小さな穴をあけて食べます.しばらく食べると移動してまた同じように食べるので,葉は一面小さな穴だらけとなります. 2週間ほどで左下のような繭を葉の上に作って(裏に作ることが多いですが表にも作ります)蛹化・羽化します. ゾウムシ類の多くは土中,材中,葉肉中に部屋を作って蛹になります.本種のように繭を作るのは珍しいことです.
クロタマゾウムシは5月中下旬からキリで見ることができます.珍しい種ではありませんが,どのキリの木でも見られるわけではありません. 葉一面に針であけたような小さな穴があけられているのを見つけたらよく注意して探してみてごらんなさい.
タマゾウムシの仲間は小さなグループで姿形も生態もよく似ています.本種とアカタマゾウムシ Stereonychus thoracicus Faust 以外はあまり多くはありません.クロオビシロタマゾウムシ Cionus latefasciatus Voss はなかなか格好がよいのですが滅多に捕れず, ゾウムシ屋の羨望の的となっています.


  もどる