犬の地図
「降らなくちや開いてやんない」晴天に紫陽花少し臍曲げてをり
花首をもたげてゐるは父子草擬のひとむれ公園の隅
放課後の発声練習G音に少しふらつく窓の蝶
梅雨入りになるのでせうか夜半からの雨が仔猫のこゑを濡らせり
雨音を分けて入り来るあけぐれの防災無線 節水を言ふ
室内の洗濯物にこもる問ひ 出口は常になくてもよろし
プードルを散歩させてる爺さまに会ふ雨の日のトンネルが好き
雨後の土いそがしく嗅ぐ犬の頭にいかなる地図の描かれをるらむ
終点は茨の中に消えてゐた 枝肉を買ふがごときさびしさ
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