螺旋の裏側
なんとなく･･･目が覚めた。
夜中に目が覚めること。
崑崙に来たばかりの頃ならよくあったことだった。
そう､あの日の夢に閉じ込められて。
何度も何度も夢を見て。
自分の未熟さを､無力さを､そしてあの女を
呪いながら､目覚める夢。
けれども目覚めた先には､いつも･･･。
横を見ると､何時も通り。
綺麗な彼が眠っている。
そっとその寝顔を覗き見る。
閉じた瞼も。
通った鼻梁も。
端整な顔立ちも。
そして蒲団から覗く､綺麗な背中のラインも。
やっぱりどれも見惚れてしまうほど素敵で。
ほう､と溜息をついた。
まだ､信じられない。
だって「彼」が自分を好きなんて。
それも友達､じゃなくて特別な意味で。
最初は全然自覚なんて無かった。
それは自分が子供だった所為だろうけれど。
とてもとても苦しかった。
彼と会うこと。
自分に笑ってくれること。
彼が他の誰かと一緒に居ること。
耐え切れなくて逃げた自分をこの人は抱きしめてくれた。
そして､好きだよ､って。
思い出しただけで眩暈がする。
それだけの幸福感。
眠っている彼の頬を突付く。
本当に綺麗だなあ､と感嘆の溜息をつきながら。
でも。
不意に思考が昏くなる。
この人は僕以外に何人の女性をその腕に抱いたのだろう。
自分は知っている。
かつて垣間見た過去だけでも両手の数では足りないほどの
女性を抱いていたことを。
胸が苦しくなる。
ぎりりと痛む。
今は自分しか想われていなくて。
彼の心を手に入れたのは自分だけだ､と何度も
彼自身から告げられたけれど。
なんて浅ましいと思うけれども。
ああけれど。
胸の痛みは消えない。
そう思うとなんだか悔しくて。
決して彼が悪いとは思わないけれど､とても悔しくて。
眠るその唇に､啄ばむようなキスをした。
半分自棄になって。
そうしたら。
不意に彼の舌が蠢いて。
｢んんっ･･･!」
そのまま絡め取られて､深く接吻られる。
｢あ…んんっ･･･」
ようやく唇を解放されると､彼はいつもの笑顔で微笑した。
悔しい､なんかすっごく悔しい。
睨みつけて来た彼を見て､相変わらず
負けず嫌いだなあと苦笑する。
実はかなり前から起きていたけれど。
目が覚めたら随分と自分のことを熱心に見ていたから､
寝たふりを続行して様子を見ていた。
その様子が､あんまりにも可愛かったから。
まさかもっと可愛いことをしてくれるとは
思わなかったけど。
どうしたの？と声をかけると
｢普賢はズルイ！！」
と噛み付いてきた。
やれやれ､今度は何だろう。
耳を傾けてみると。
｢普賢の過去の女性経験になんで僕がこんなに
むかつかなきゃなんないんだよっ!!
僕なんてキスだって初めてだったのに!!」
僕だけこんなに悔しいなんてズルイっ!!
眉を吊り上げて怒る君に…僕は唖然とした。
だって。
今、望ちゃん､何ていったの?
次いで笑いがこみ上げてくる。
何だって君はこんなに予想不可能なこと
してくれるんだろう。
それって相当強烈な愛の告白に聞こえるのは…
僕の頭が君でイカれてる所為かな？
笑う僕を気に入らなかったのか…
君はすごい瞳で僕を睨んでくるけれど。
今の僕には逆効果。
抱きしめて､そのままもう一度ベットにダイブして。
思うが侭に肌を貪った。
｢んっ…あぁんっ!!」
官能的な声が､僕を溶かしていく。
｢君だけだよ･･････」
うわ言のように呟くけれど。
｢うそつき･･････」
涙声で酷い返事が返ってくる。
｢嘘じゃないよ･･････
だって僕､望ちゃん以外にキスマーク付けたこと無いもの。
キスだって…望ちゃんが初めて」
僕の下に組み敷かれた君の身体が､ここではじめて反応した。
｢うそ･･･」
｢嘘じゃないよ…」
優しくゆっくりと君の身体を溶かしていく。
そっと唇を啄ばむと。
君は泣いていた。
君の涙を､僕はそっとすくい取った。
せめて､
君の痛みが､悲しみが､癒えますように。
願いを込めて。
心が伝わるように。
僕はその夜､何度も君を抱いた。
=the end=
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はいー螺旋の番外編です。
数年後の望と普賢。
この時は両思いになったばっかの頃かな？
てかその時点で普賢手出してんだ!!
早っ!!!←をい…
まあ…やっぱり望はそれなりにショックだろうし…
裏に置くにしても…続きだし。
つーかヤってるけど具体的描写は特にないし…
てことで半裏隠しでやりました。
これで螺旋は正真正銘終了です。
ご愛読ありがとうございました（＾＾
峪栞
＜紅馬のコメント＞
あぁぁ、またしてもかっこ良い普賢に可愛い望ちゃん！！Ｖｖ
キスするのとキスマークつけるのが初めてっていうのはやっぱり基本ですよね！！Ｖｖ
キャーーー、普賢様素敵過ぎます！！Ｖｖ
普賢が抱いてきた女の人達に嫉妬する望ちゃんも可愛くて堪りませんＶｖ
最後の一文『僕はその夜、何度も君を抱いた』ってすっごくツボです！ｖ
栞さんに螺旋の半裏、お願い(？ってか、寧ろ脅迫)して良かったですｖ
栞さん、半裏までアップ許可下さって有り難うございました！！ｖ