家族の日常   ***普賢先生の日常   普賢はとある大学で物理の教授をしています。   教授の中でも若くて格好良くて優しくて、特に女生徒から絶大な人気を得ております。   普賢先生の講義はいつも満席で、「普賢先生ファン」を自称する生徒は一番前の席を取るために   教室に並んだりする程です。   しかし特に普賢先生は家族が大好きで、より遅くに出勤してより早く帰りたいからと、   その講義の殆どが二限と三限ばかりなので、より競争率の高い講義になるのでした。   講義の内容は大変難しいものですが、普賢先生の場合、90分授業のおよそ半分は、   溺愛している二人の息子の話で潰れております。   もちろん最愛の奥様もいるらしいのですが、普賢先生は奥様の話はあまりいたしません。   どうやら、奥様の話を始めると90分ではおさまらないらしいのです。   また、奥様の話をすると、女生徒らが嫉妬をして先生の自宅へおしかけるのだという噂もありました。   しかし真実は闇の中。   今日のお話は、特に溺愛しているという二番目のお子様のお話でした。   本日の普賢先生のお弁当は、二番目の息子さんの手作りおにぎりだったのだそうです。   おにぎりの具は、キョロちゃんで有名なあのチョコボールでした。   二番目のお子様はとても優しくて、ご自身の大好物を入れてくれたのだと、   先生はそれはそれは嬉しそうに語りました。   「この間はね、ミルキーだったんだ」   先生は遠い目をしてそう言いました。   お子様の小さな手で握られたおにぎりを思い返して、先生はうっすらと感動の涙をうかべるのでした。   そして講義時間のうちの約半分、45分程が過ぎるのでした。   ***奥様の家出。   そしてその頃。   普賢先生の自宅では。   二番目の息子さん--名前を望2ちゃんと言います--が、明日の普賢パパのお弁当のメニューを   考えておりました。   また、自分の好物でおにぎりを作ろうとしています。   望2ちゃんは、おにぎり以外作れないのです。   「ねえかあさま。明日はポテトチップスおにぎりにしようと思うんだけど、とおさま食べてくれるかな」   「ああ、そりゃあ食べるだろうよ。おぬしの作ったものなら、あやつは何でも食う」   かあさま、と呼ばれた望2ちゃんにそっくりな可愛い奥様は、そう面倒臭そうに答えました。   「じゃ、明日も早起きしなきゃ」   望2ちゃんはお母さんに教わっている数学の問題集(大学受験用)を解きながら、そう呟きました。   そんな息子を前にして、可愛い奥様--望ママ--はちょっと不機嫌でした。   自分の旦那さまが自分より息子を可愛がっている様で、かつ、息子も自分より父親になついている様で、   少し嫉妬したのです。   そして望ママは、ちょっといじわるくこう言いました。   「のう望2よ。普賢パパはな、わしのものなのだぞ?」   望ママは、きっと望2ちゃんが”そんなのヤダ”とだだをこねると予想していました。   そうしたら、冗談だと言ってあやしてやろうと、そう思いながら、望2ちゃんの反応を待ちました。   すると望2ちゃんは、望ママの予想に反して、にっこりと笑いました。   さらにちょっと頬を染めて、望2ちゃんはこう言いました。   「でも望は、パパのものなんだぁ」   さも満足そうにそう言い放つ望2ちゃんを見て、望ママは愕然としました。   そして望ママはこう思ったのでした。   ・・・負けた・・・。   そこへ、もうひとりの息子で長男の普賢2が、お買い物から帰ってきたのでした。   「ただいまー。・・・あれ・・・?   何をしているの。かあさま?」   一方、やっと物理の講義に入った普賢先生。   「えと、じゃあ、テキストの36ページを開いてね」   そこでタイミング悪く、先生の携帯電話が鳴りました。   「あっ・・ごめん。あれ、自宅からだ?」   普段なら講義中の電話になど出ない先生でしたが、自宅からとなると話は別。   教壇の真中で、満員の生徒たちの好奇の視線を受けつつ、慌てて携帯に出てしまいました。   「もしもし。今、講義中なんだけど・・あ、普賢2?どうしたの」   「とおさま。大変だよ。かあさまが・・」   「望ちゃんがどうしたの!?」   思わず大声になる先生。   もう周りは見えていません。   生徒たちも、固唾を飲んで先生を見守っています。   「今ね、かあさまが泣きながら荷物をまとめているんだ。なんか、望2ちゃんを連れて出て行くって」   「出ていく!?」   普賢先生の動揺が教室中に広がって、ざわざわと声がし始めました。   「育て方を間違えたとか言っているけど、僕、よく分からないんだ。とおさまどうしよう」   「ま、待って!今すぐ帰るから!」   そう言って普賢先生は教室をとび出してしまいました。   もちろん、次の日からは普賢先生の離婚話など、様々な噂話が大学中に蔓延している事は   言うまでもありません。   ***仲直り。   「かあさま。きっととおさまだって、かあさまの事をないがしろにしているわけじゃないんだよ」   「なこたわかっておる!わしが気に食わぬのは望2だ!」   望ママは普賢2にたしなめられて、苛々しておりました。   「望2ちゃんは悪くないよ」   「それもわかっておる!」   望ママと普賢2の押し問答の傍らで、ぐすぐすと泣きながら望2ちゃんが立ちすくんでいます。   「かあさま、どうして怒るの?」   「そうだよ。かあさま、どうして怒っているの?」   うう、と望ママは言葉を詰まらせました。   それからしばらく押し黙って、望ママはポツリとこう言いました。   「すまぬ。その、望2は、わしの生き写しだ・・だから・・」   「だから?」   息子たちはじっと望ママを見詰めました。   「わしと同じ発想をするのが、恥ずかしくて見ていられぬのだっ!」   望ママが年甲斐もなく真っ赤になってそう白状しました。   「なぁんだ」   普賢2は少し安心した様な、気の抜けた様な声をあげました。   「それだけなの、かあさま。僕もっと余計な心配しちゃったよ」   望2ちゃんはポンと手を打って、それからこう言いました。   「じゃあかあさまも一緒に、ポテトチップスおにぎりつくりたいんだね」   「・・いや。そうじゃなくって」   望ママと普賢2が同時に、望2ちゃんにツッコミみました。   「望ちゃん!!まだいる!?」   そこで、大慌ての普賢が家に飛び込んできたのでした。   「何だ普賢。そんなに慌てて?」   「あれ、とおさま。今日は早いねぇ」   普賢を出迎えたのは、冷静な家族の声でした。   そこには、まったくいつもどおりの3人の家族が、まったくいつもどおりの家庭の営みを   しているのでした。   「・・・あれ?」   「おかえりとおさま。もう問題は解決しちゃったよ」   普賢2が、普賢にそっくりな笑顔でそう言いました。   普賢もまた、全くおんなじ笑顔でこう言いました。   「そう・・あの、ただいま・・」   胸中穏やかでないままに。                オチませんが、おしまい(汗)                一万HITおめでとう御座います。                す、すいませ・・・。
  <紅馬のコメント>   このSSはうちのサイトの1万HIT記念に宮乃純様に頂いた物です!!   あぁぁ、なんて可愛らしい…!!み、宮乃さん、最高です…!!(涙)///   一応元は私のオリジナル設定の普太家族で普賢2(ツー)と望2(ツー)という子供2人がでてくる   4人家族のパラレル物なんですが……   も、もう誰のオリジ設定かわからない程に完璧な素晴らしさです〜〜Vvv   女生徒にモテる普賢パパ!!   旦那様(笑)を取られて苛々している望ちゃん!!   望ママをたしなめている普賢2!!(笑)   そしてそして、とぉさまの為に小さなおて手でおにぎりを握る望2!!   しかも自分の好物を具にする可愛さ!!(今回のクリティカルヒット///)   (どうでも良いのですがポテトチップスおにぎりってちょっと美味しそうです…/笑)   か、可愛いすぎです〜〜〜!!(涙)Vvv   あぁ、私の理想の家族がここに…!!///   宮乃さんのSSで普賢先生の離婚話の噂で持ちきりの大学生活も拝見したいです///   女生徒に家まで押しかけられたりするのでしょうか?!!(ドキドキ///)   なんというか、いっそ宮乃さんのオリジナルにして続きを書いて欲しいです〜〜!!(いや、迷惑だし…υ)   宮乃さんはイラストもSSもすっごく素敵で本当に尊敬してしまいます///   しかもご本人さんもとっても美人で優しくて大好きなのです///(告るな。)   そんな宮乃さんに1万HIT祝って頂けたなんて感激です!!   宮乃さん、有り難うございました!!!